あ
い
- 池上 千惠美
草取りはしていないよと帽子取る母の手見れば爪に黒土 - 石川 想凪
洗濯ばさみゆっくりと付けるその動きともに干す日のやわらかな時間 - 石田 彩奈
話せないばあばが言った「あやちゃん」は忘れられない最後の言葉 - 磯田 夏帆
面会でタブレット越し耳寄せて何度も聞き返し過ぎゆく時間 - 伊藤 五郎
ひさしぶりニワにでてみるてさぐりでおどろくなかれクサは木となり - 伊藤 沙莉
カレンダー一緒にペラリ時をともにすごせた気がしてうれしいな - 井上 仁大
テスト前呼ばれる声に立ち上がる勉強よりも今はおばあちゃん - 今道 花音
友からのLINEをそっと閉じながら向き合う祖母の昔話に - 入江 君榮
もうだめと介護から逃げ空を見る お乗りなさいと雲が呼んでる
お
- 近江 菫花
お土産の鳴子 カタカタ打ち鳴らし母がベッドでよさこい踊る - 大内 二男
手を振りてデイサービスに妻は行き静かになりて智恵子抄読む - 大久保 弘子
気づいてよ話す相手もなくただ一人自分を介護してる私を - 大谷 悦子
起きられぬ支えられぬというときは馬乗りで切る介護美容師 - 大塚 とみこ
父の腰を診たあと俺もなんだよと先生言った 梅雨明け間近 - 大野 康子
口癖の「できるできる」が出来なくて出来ない事の言い訳を聞く - 岡田 節子
在宅を始める前にサインする虐待、放棄致しませんと - 岡本 三陽子
おかあさんこの言葉には味があるたきたてごはんみたいにぬくい - 岡本 類子
逞 しい腕にすがりて浴室へ髪とかしくれて「きれいな白髪」と
し
た
- 田井 温子
年重ね聞こえが悪くなろうとも子が帰宅する音は聞こえる - 高岡 誠
祖母二人曽祖母一人動くたび私はいつも杖 の代わりに - 高木 広明
気負わずに生きてゆけそう施設でも真昼の舗道に猫が寝そべる - 高木 瑞生
デイケアを終えて帰った祖父の服夏の木漏れ日やさしくまとう - 高澤 真
年金の手取りで決まる入居先 やっぱり最後も格差の社会 - 高橋 直子
施設行く朝父が言う微笑 んでおまえの介護嫌じゃなかった - 竹内 妃夏
利用者に日本語上手と言われたがすみませんわたし日本人です - 竹本 琴美
見えづらい動きづらいの疑似体験祖母の日常想像以上 - 田嶋 由美子
子つばめがベッドの窓を訪 いて胃ろうのさなかに吾子 は指差す - 田村 悠依
繋 いだ手感じる感触骨ばかり昔は逆に肉ばかりだったのに - 弾正 佼一
「もったいのうてトイレの手摺 は使えんしお前が使え」父の遺言

