2000年 7−8月号 NO.20
【こころの時代】

囚われ人として
― シベリアで半世紀を生きて

蜂谷弥三郎



蜂谷弥三郎さんは81歳。鳥取県気高町に、奥さんの久子さんと、娘の久美子さんの家の隣で暮らしています。敗戦を北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の平壌で迎え、1946(昭和21)年、身に覚えのない罪でソ連軍に連行され、妻と生まれたばかりの娘との生活から引き裂かれました。取り調べで受けた拷問で片耳は聞こえなくなり、一方的な裁判により反ソ連スパイ罪で懲役10年の刑を宣告されました。シベリアの流刑地で生死の境をさまよいながらも「生きて日本に帰る」という不屈の意志で生き延び、やがて刑務所で理髪師の技術を必死に身に付けます。刑期が終わっても日本との連絡はいっさい許されず、生きるためにソ連国籍を取り、同じ境遇のソ連女性と結婚もしました。半世紀を経て、日本で生きる妻子の消息もわかった蜂谷さんが帰国して語ったお話はこの5月にラジオ深夜便で3夜にわたって放送され、大きな反響を呼びました。