2004年 10月号 NO.51
【こころの時代】

沖縄地上戦の陰で
〜戦争マラリアと遺族たち

篠原武夫



 那覇市に住む篠原武夫さん(63歳)は、琉球大学農学部教授、八重山戦争マラリア遺族会会長です。敗戦間近の1945(昭和20)年、篠原さん一家が暮らしていた石垣島の島民は、日本軍の命令によって強制移住させられました。しかし、移住先は悪性マラリアを媒介する蚊が猛威を振るう地で、篠原さんの母と姉、妹はマラリアで命を奪われたのです。  戦後40数年を経て、篠原さんは強制移住によるマラリアの犠牲者が八重山諸島全体で三千人を超えていたことをつきとめ、遺族に呼びかけて国家補償を求める活動に取り組んできました。篠原さんが、知られざる「戦争マラリア」の悲劇を語ります。 [聞き手 西橋正泰《まさひろ》]