数ミクロン径のガラスファイバーを多数束ねたFOP(Fiber-Optic-Plate)基板上に高感度なセレン光電変換膜(HARP)を作製する技術です。
利用分野
・X線用撮像デバイス
・近赤外光用撮像デバイス
特長
(1)FOP 基板表面の平坦化により、高感度動作時の画面欠陥(画面上に現れる白点キズ)の発生を抑制しています。
(2)蛍光板やイメージインテンシファイアーと組み合わせることで、高感度で高画質なX線、近赤外光用撮像デバイスを実現できます。
技術解説
HARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)撮像デバイスは、セレン光電変換膜内で生じる「なだれ増倍現象」を利用することで高い感度を得ることができるため、少ない光で高画質な映像撮影が必要とされる夜間緊急報道や科学番組制作などに利用されてきました。また、放送分野のみならず、医療、バイオ研究等への応用も進められ、なかでも、少ない線量のX線で高精細なイメージングが可能であることから、放射線医療診断の分野に飛躍的な進歩をもたらす機器として大きな期待が寄せられています。しかし、被写体を通過したX線で発光させた蛍光板上の可視光像をレンズ結合によりHARP 撮像デバイスで再撮像する従来の撮像システムでは光の利用率が低い(数%程度)という課題があり、これを解決する一手法として、FOP を用いてX線用蛍光板とセレン光電変換膜とをファイバー結合する技術を開発しました。
(1)FOP 基板の表面平坦化技術と同基板上へのセレン光電変換膜の作製技術
セレン光電変換膜内で「なだれ増倍現象」を起こさせるためには膜に強い電界を加える必要があり、FOP 基板の表面平坦性が十分でないと画面欠陥の発生要因となります。しかし、FOP 基板は硬さの異なる3 種類のガラス材料で構成されているため、これまでは表面を十分に平坦化することが困難でした。そこで、FOP 基板の表面を均一に平坦化できる新たな研磨技術を開発し、強い電界を加えても画面欠陥が発生しないセレン光電変換膜をFOP 基板上に作製することが可能となりました。これをFOP-HARP 撮像デバイスと呼びます。
(2)FOP-HARP 撮像デバイスを用いたX線、近赤外光撮像システムの設計技術
X線用蛍光板とFOP-HARP 撮像デバイスを結合することで、X線撮像システムにおける光の利用率が数十倍程度に向上するとともに、被写体の大きさや、求められる解像度などに応じたシステム設計が可能となります。また同様に、近赤外光を可視光に変換するデバイスであるイメージインテンシファイアーをFOP-HARP 撮像デバイスを結合することで、高感度・高画質な近赤外光撮像システムが構築できます。
提供可能な技術
・FOP 基板の表面平坦化技術と同基板上へのセレン光電変換膜の作製技術
・FOP-HARP 撮像デバイスを用いたX線、近赤外光撮像システムの設計技術
関連特許
・特許第6518038号 光電変換素子の製造方法
(上記のリンクは開放特許DBにリンクしており、NHK財団のWebサイトから離れます)
≪キーワード≫ FOP / HARP / セレン / X線 / 近赤外光 / 高感度 / 撮像デバイス
本技術の利用に関するご相談窓口:URL https://www.nhk-fdn.or.jp/es/transfer/contact.html